「高い利回り」「身近な不動産投資」
そんなキャッチコピーを掲げて、多くの個人投資家を引き付けてきた不動産ファンド「みんなで大家さん」。

しかし、2025年夏、想定された分配金の支払いが遅延し、出資者側の不安が一気に噴出しています。
さらに…出資者約1200人が出資金の返還を求めて大阪地裁に集団提訴を起こしたという報道もされました。

今回はこの事案を「どうして起きたのか?」「出資者は今何をすべきか?」「この先どういう展開が考えられるか?」という観点から整理、考察していきます。

「みんなで大家さんシリーズ成田」とは?

成田空港から車で3分の場所に、東京ドームの10倍の敷地にスクリーンを備えた5000席のドームやエリア最大級のホテルなどのグローバルスペックを備えた新しい街「ゲートウェイ成田」の開発への出資を募るものです。
商品名は「みんなで大家さんシリーズ成田」です。

ちなみに「みんなで大家さん」には「シリーズ成田」以外の商品も含めて約38000人が出資しているようで、集めた金額は総額2000億円以上だそうです。

事案の概要

次に何が起きているのかを整理しましょう。

・「みんなで大家さん」は不動産特定共同事業(不特法)を活用して、投資家から出資を募り、複数人で物件(土地、開発用地なども)を所有・運営し、賃料収入や売却益を分配するとされるスキームです。

・今回問題となっているのは、主に「成田空港近くの大規模開発用地」が対象となった「シリーズ成田」です。出資金額が2000億円超の規模にのぼると報じられています。

・2025年7月31日、運営会社から「分配金(利益分配金)の支払いを一時的に遅延せざるを得ない事態になった」という通知が出されました。

・みんなで大家さんは「シリーズ成田」以外にも「国産バナナ事業」や「伊勢忍者キングダム運営」なども運営していますが、コチラも分配金が遅延しています。

・遅延の背景には対象不動産を賃借していたテナントからの賃料支払いが滞っていることが挙げられています。(2024年4月分以降の支払いがされていないという通知が投資家に届いています)

・運営会社側は「不動産の売却・担保提供等によって資金回収を図り、早期に支払いを再開したい」と説明しています。

・出資者側が出資金の返還を求めて、約1200人規模で大阪地裁に集団提訴を行ったという報道が出ています。


このように当初「利回り7%」などの高利を謳っていたスキームが現実的な収益の確保が困難となっている状況にあり、出資者の間に「元本も戻らないのではないか」という危機感が高まっています。

なぜ遅延が起きたのか?

では、なぜこのような遅延が起きてしまったのでしょうか。

テナント賃料滞納・収益原資の崩れ
対象不動産(シリーズ成田)では賃料を支払う契約先(テナント)が、2024年4月以降賃料を支払っておらず、収益原資が枯渇していることが大きな原因です。
「賃料収入」が出資者へ分配金を支払うための原資となるわけですが、この収入が途絶えれば、分配金を出せないのは明らかです。


開発計画の遅延・実績の乖離
当初、開発用地に対して「商業施設」「ホテル」「会議施設」など大規模な構想が示されていたにもかかわらず、報道では「ほぼ更地状態」「実際の建築進捗がほとんど進んでいない」などという指摘がなされています。
開発が遅れれば、テナント誘致、稼働、収益化も遅れ…結果として収益化のタイミングがずれ込むことになります。


運営会社・販売会社に対する行政処分・信頼低下
このスキームの運営主体である「都市綜研インベストファンド みんなで大家さん販売等」は、2024年6月、大阪府および東京都から一部業務停止の行政処分を受けています。
理由としては「投資対象変更説明不足」「契約書面の不備」「情報開示の適切性欠如」などが挙げられています。
この処分を契機に出資者からの解約申請が殺到し、信用収縮→資金繰り悪化という構図となった可能性があります。


規模の大きさ・複雑なスキームゆえのリスク
「シリーズ成田」だけでも、数千億円レベルの出資額が報告されており、投資家数も「38000人」などの数字が出ています。
このような巨大規模で土地取得・開発・賃貸収入・再販(売却)というフローを回すには、想定どおりに各段階が進まなければ大きなズレが出ます。
さらに不動産特定共同事業(不特法)の匿名組合スキームには、投資家保護の仕組みが信託銀行型ファンドなどと比べて緩やかという指摘もあります。


以上のように、収益原資の問題・開発の遅れ・運営側の信頼問題・スキームの難易度という複数条件が重なって、分配金の遅延という事態に至ったと考えられます。

出資者が取るべき対応と現状の法的枠組み

遅延が起きてしまった以上、出資者はどう行動すればよいのでしょうか。
法的手段、注意点を整理します。

集団訴訟という選択肢
報道によれば、出資者約1200人が「出資金返還」を求めて、運営会社・販売会社を相手に大阪地裁に集団提訴を起こしています。
このような集団訴訟は、同種案件で被害を受けている多数の出資者が連携して、運営側の説明責任・契約不履行・損害賠償などを問うという手段です。
「5人の出資者が1億円の返還を求めて東京地裁に提訴した」という報道もあり、少人数訴訟から一定規模の集団訴訟に拡大していることがうかがえます。


個別請求・契約解除の検討
集団訴訟と並行して、個別出資者が自ら運営会社等に対して契約解除・出資金返還・損害賠償請求を検討することも可能です。
ただし、以下の注意点があります。

・契約書、契約概要(重要事項説明書)、出資時説明資料を確認し、「運用開始期日」「分配予定」「解約条件」「報告義務」等の条項を把握すること。
・運営会社側の資力、財務状況、担保状態、不動産価値の実態を調査する必要があります。どれだけ権利が確保できているかが返還可能性に影響します。
・法的手段をとった場合、訴訟費用・時間・回収可能性を見極める必要があります。場合によっては費用倒れとなるリスクもあります。


今後の見通しと回収可能性のポイント
運営会社が提示している「不動産売却」「担保提供」「リファイナンス」などによる資金調達によって、分配金支払い再開・出資金返還に向けた道筋が描かれています。
ただし、見通しには以下の不確実性があります。

・対象土地、開発用地の実質的な価値、売却可能性。開発が遅れ「ほぼ更地」の状態という報道もあります。
・テナント賃料系の収益原資が滞っており、再び賃料収入が安定するまで時間がかかる可能性。
・運営会社、グループ企業の信用や資金繰りが悪化しており、資金が新規出資に頼る自転車操業的な構図になっていないか監視が必要。


このように全額回収・元本全額返還が確約された状況ではありません。
出資者には「今後何が起きてもおかしくない」という心構えが求められます。

なぜ投資家はこのスキームを選んだのか?

今回の事例を理解するためには、出資者がなぜ「みんなで大家さん」に資金を預けたのか?
そこにあった魅力と落とし穴を整理することも重要です。

魅力的だったポイント
・「年利7%」などの比較的高い利回り水準が提示されていたこと。
・「1口100万円から」という参入しやすいスキームだったという報道もあります。
・不動産という「目に見える資産」を投資対象とするため、預金・債券・株式と比べて安心感を抱きやすかった。特に退職金を元手にした中高年の投資家層に訴求力があったようです。


落とし穴・リスクとなった構造
・「不特法(匿名組合)スキーム」であるため、運用報告・監査・第三者の鑑定評価などが必ずしも徹底されていたとは言えず、透明性・流動性において信託型ファンド等と比較して弱いという指摘があります。
・高利回りゆえに、前提として「テナント賃料」「開発スケジュール」「土地価格上昇」などが順調にいくことが仮定されており、実際にその前提が狂った時のリスクが十分説明されていたか疑問です。
・「安心して不動産投資できる」との宣伝効果もあり、金融リテラシーが十分でない投資家(特に高齢層)が預金感覚で出資してしまった可能性があります。
・投資対象が「開発用地」「大型施設計画」といった着工から収益化まで時間がかかるものであり、流動性が低く、途中で出口(売却)をきちんと想定していないケースも。事業が予定通りに進まないと相当な影響を受けます。


こうした観点から、「高い利回り」「手軽な出資」など魅力的な訴求だけで判断するのではなく、「何が原資か?」「何が前提か?」「どんな不測のリスクがあるか?」を冷静に見極める必要があることが今回の事案から学べます。

なぜ約1,200人が返還を求めて提訴という事態になったのか?

「出資者約1200人」が集団提訴という動きに至った背景には、以下のような事情があります。

分配金遅延
分配金が予定通り支払われないという事実。特に賃料支払いが滞ったという通知が投資家に届いたことで、「今後も支払われないのでは」「元本も返ってこないのでは」という恐怖に火が付きました。

解約、返還の難しさ
行政処分後、解約を申し出た投資家からの返金手続きが進まないという報道もあります。例えば「解約申請から1年経っても返金されない」という声も。

運営側の説明・対応不足
運営会社側からは「売却・担保で対応」という説明が出ていますが、具体的なスケジュール・担保内容・見通しなどが曖昧であり、投資家の信頼が揺らいでいます。

投資家の危機意識の高まり
SNS上では「退職金をほとんど出資してしまった」「生活費にあてにしていた分配金が来ない」という投稿が相次ぎ、「自分だけ取り残されたくない・声をあげなければ」という動きが出ています。


このような集合的な危機意識が、集団提訴という形で実を結んだと見ることができます。
なお報道では「約1200人」という数字もありますが……これは今後増える可能性もあり、訴訟の規模・影響ともに注目です。

今後の展開と注目点

では、今後この案件はどういう展開を辿るのか、注目すべきポイントを整理します。

運営会社側の対応・資金回収スキーム
運営側は「対象不動産の売却」「担保提供」「リファイナンス検討」などを打ち出しています。
注目すべきは3つです。

・実際にどの不動産がどれだけの価格で売却できるか
・賃料収入の回復およびテナントの支払い再開時期
・出資者への分配金再開、元本返済スケジュールの提示の有無

特に、売却価格が想定を大きく下回ると出資者の元本回収に影響が出るかもしれません。


法的判断と判例の影響
集団提訴の結果、裁判所がどのような判断を下すかが、今後の不動産クラウドファンディング・スキームの運営に影響を与える可能性があります。
たとえば以下の3つなどです。

・運営会社、販売会社の説明義務違反が認められるか?
・出資契約上「運用開始まで・分配金開始まで」の責任がどこまであるか?
・投資家保護の観点から、スキーム設計における透明性・流動性の基準が問われるか?

こうした法的判断が出ることで、今後同種の案件に対する規制・監督が強まる可能性があります。


不動産クラウドファンディング市場・制度へのインパクト
本件は不特法スキームを用いた「小口不動産投資商品」の中でも大規模な案件であり、業界全体に対する信頼失墜につながる可能性があります。
すでに「運営会社の説明不足」「前提が甘かった」との厳しい指摘が出ています。
今後、投資家保護の観点で、以下のような制度・慣行の見直しも考えられます。

・勧誘、説明資料におけるリスク開示の強化
・運用開始、収益化までの進捗報告義務の明確化
・投資家の属性、リスク許容度に応じたスキームの選別
・流動性、出口戦略の明文化

このような変化によって、以前より投資家側の目線・チェック項目も厳しくなるかもしれません。


出資者として今すべきこと
今回のようなトラブルに直面した出資者・今後出資を検討する方に向けて、以下の対応・心構えが有効です。

・保有している出資契約書、重要事項説明書、運用レポート等を改めて整理しておく。
・運営会社、対象不動産、スキームの進捗状況を定期的にチェックする。特に「賃料収入」「テナント状況」「開発進捗」「売却・リファイナンス状況」など。
・分配金が遅延したり、運用報告が止まったりしたら、速やかに専門家(弁護士・司法書士)に相談する。
・出資金を「預金感覚」「確実に戻るもの」と考えず、最悪の場合の損失も想定し、適切に分散投資を図る。
・今後出資を検討する際は「利回りだけではなく、仕組み・前提・リスク」の説明が十分かどうか慎重に判断する。

まとめ

「みんなで大家さん」の今回の分配金遅延・返還請求という事案は単なる個別トラブルではなく、投資家が「不動産投資」「小口化ファンド」「高利回りスキーム」とどう向き合うかを問うものとも言えます。

・高利回りには、それだけリスクが潜む。

・不動産という安心感だけで判断してはいけない。目に見えない前提(テナント賃料、開発進捗、売却可能性など)にこそ留意すべき。

・運営会社、スキームの透明性、説明責任を見極めることが、投資成功の鍵。

・出資したら「放ったらかし」ではなく、定期的に進捗を確認し、異変があれば早めに対応を検討すること。


特に退職金を元手に運用を始めた中高年層の方々にとって、こうした案件は「生活設計を左右しかねない重大なもの」です。
今回の事案は、そうした方たちにとっての警鐘ともなりうるでしょう。

最後に、今回「約1200人が返還を求めて提訴」という事態になったこと自体が多数の投資家が一斉に「何かがおかしい」と目を覚ました証左とも言えます。
もしあなたがこのスキームに出資している、あるいは出資を検討中なら、今一度「自分は何を買ったのか?」「何を前提にしていたのか?」「もし予定が狂ったらどうなるか?」を冷静に確認していただきたいと思います。

このブログが皆さまの投資判断・リスク認識を改めて整理する一助となれば幸いです。


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